《MUMEI》
4
「こんなところに、一人で、何をしに来たんだ」
「水を、汲みに」
なぞるように人を食った答えが返ってくる。
「何かを探しにでも来たのか?」
尋ねながら、まるで進路相談にのる教師のようだと自分で思った。
「そうですね。何だと思いますか。あなたはそれを知っていて、何処へ行けばそこに辿り着けるのか知っているみたいですね。そう見えますよ。違いますか? ねぇ、先生」
心を読まれたかのような言葉に、束の間、目を伏せる。
「知りたいのか」
未来を夢見る学生を試すように向けられた視線は、一体何を試そうとしていたのだろう。
「何の為に」
砂山が重ねて聞いたのは、予想していたからかもしれない。
世界規模の厄災以前、都市部地下に広大な防空壕なるものが建設されているという噂があった。

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