《MUMEI》
5
当局により計画された、地下都市設計図の全貌は、今となっては不明である。
だが、限られた範囲には違いなく、全てが収容されるはずもない。
選別されたものだけを救う方舟。救われるものを誰が選ぶというのか。
恐らく、高邁な思想で満ち溢れた神様に違いあるまい。
「あなたは、どうしてこんなところに一人でいるんですか」
砂山の質問に何と答えようとした結果なのか、微妙に歪んだ質問返しだった。
「楽園には審判の扉があるんだ」
審判の扉、と鸚鵡返しに繰り返される。
「資格があるかないかを試される」
「資格って何ですか」
「君は地上に未練がないのかな」
「それって重要なこと?」
砂山は首を大袈裟に傾げて見せる。
「俺の友人は地下へ仕事に行って戻って来ないよ。資格に合格して、選ばれて」
本当は選ばれた訳ではない。最初から資格は持っていたのだ。選ばれる必要のない人物。

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