《MUMEI》
私と"私"
"私"、黒川優理は死んだ。
何故なら私の前には血を流し道路に倒れている"私"がいるからだ。
"私"はたくさんの人に囲まれ、後から来た救急車に乗せられていたが、当然生き返ることはない。誰からも気づかれない私がここにいるのだから。
私に残されているのはここに残りあてもなくさ迷うか、天から差す光に導かれるか。
私は迷わず光を選んだ。
親は産まれたときからいないため、親戚を転々としながら、受け続けた余所者の目。学校ではいじめを受け、先生の薄っぺらい優しさを受けた。
生きる価値のない存在とは分かっていたが心の底では生きたいと思っていた。
だが、周りの目は"私"受け入れてくれない。
いっそのこと生まれ変わりたいと思い、現世には振り向かずただまっすぐに光を見つめていた。
体がふわふわとした感覚に天に上っているのだと感動した。
このまま天国へ行くと思っていた。
しかし突然周り一面真っ暗闇になり、いきなりの事に困惑したが次の瞬間強い光になり思わず目を閉じた。
恐る恐る目を開けると一面緑の草原に立っていた。
風になびく髪に地に着いた足、足元は草がチクチクと差すほんの少しの痛みに私は実体化していることが分かった。
私は生き返ったのか?ここは何処なんだろうか?と次々と疑問があるが答えが分かるわけもなかった。

耳をすますと小さくだが何か聴こえた。
「……――めだ……」
「でも……」
「……みの……こ」
『誰…?誰かいるの?』
「!?やはり……」
「うん、――めだ」
「どうする?」
「それはやっぱり……」
『あの……』
「ほら、―とめを待たせてる」「そうだな」
『え?……きゃ!?』
ブワッと風が強く吹いたと思ったら目の前に小さな羽の生えた小さい人が飛んでいた。
「初めまして、僕は風の妖精のランです」
「私はルンです」
「アタシはリンだよ」
『喋った……』
「む!ひどいなぁアタシ達だって喋ることはあるよ!」
「人前ではあまり話さないけれど貴女は特別です」
『……特別?』
「貴女は女神の生みし黎明の乙女ですから」
『もう……ワケわからない……』
「あれ?乙女?」
「え?何々どーしたの?」
「……気絶ですね。無理もありません」
「取りあえずここではなんだから」
「そうね、アタシはグラムラスを呼んでくる」
「じゃぁ、僕たちは結界を張っておこうか」

こうして私の第二の人生が幕を開けた。

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