《MUMEI》

――――「親無し」
幼稚園に通い始めた頃、"私"が孤児だと知った同じ組の子が言った言葉だった。卒園する頃には園児皆から呼ばれていた。
小学校では小さな嫌がらせ、中学では悪質ないじめを受けたこともある。
"私"はただただ耐えていた。耐えていたというよりは憮然と皆を見ていた。虐めを受けても子供じみた事と思い、「死ね」と言われても何も感じなかった。

感情を捨てていた。

笑うこともなく、泣くこともなく無表情で終始無言の"私"に周りは何も言わなくなった。かわりに存在を消された。
私がいなくてもクラスの決まり事はあっさり決まり、行事の役割に"私"の名前が消えていった。
家と呼べる家もなく、親戚の家をタライ回しにされた。体裁を守るために、表面的な高評価を得るためだけに引き取っては人としての人権は与えられず、奴隷のように働かされた。
毎日のように叩かれ、泣かない"私"に気味悪がって他へと移される日々。

高校生になりバイトが出来るため、ようやく"私"の人生を変えることが出来るかもしれない矢先の交通事故。

これは天罰ですか?
私が何かしましたか?
生きたと自信を持って言えない実感のない人生を"私"は人生だと認めたくない。

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