《MUMEI》

麻里の夫は日本人ではない。
所謂、在日というもので、これを聞かされる友人達はいい顔をしない。

ここら辺は実にナイーブな問題ではあった。

麻里の顔立ちは面長で黒目がちの目元が幼い少女のようで、大学時代は化粧を頑張って老けて見せることに必死だった。

赤い口紅はファンデーションで浮いた顔を更にけばけばしく見せる。

高校時代まではそれなりに告白もされた、付き合ってみたこともあった。
スポーツ特待生に選ばれる実力のある、バスケ部の先輩だった。

女性遍歴もそれなりにあったようで、五回目のデートの後にセックスをした。
なんとなく、意識をしはじめて、そういう雰囲気に流されてしまう。

相手も理解していたようだったが、漫画みたいにどうしても気持ちよくはならなかった。

二回目は一回目よりは普通で、こんなもんかと拍子抜けしたものだ。

三回目で、麻里とその先輩との間に温度差が生まれた。

当時の麻里はセックスを好きになれなかったのだ。

自分勝手な男の独りよがりのが生み出した、オナニーセックスによくある現象である。


麻里はそんな心的外傷もあり、セックスに対しては消極的だった。


今の夫とは、ボランティア同好会の合宿で知り合った。
合宿というより、近くの施設に顔を出すがその近くのコテージでキャンプをするのが目的だ。

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