《MUMEI》

夜中に尿意を催した麻里は、テントから出て仮設の簡易トイレに向かった。

一人寝床が空いていたので、同じようにトイレか飲み物を買いに自販機に行ったかもしれない。


「ああっ……、ああっ」

苦し気な呻き声が響く。

急に今朝話していた幽霊の話を思い出した麻里はそのまま失禁してしまった。

ジョワジョワ、みるみるうちにショーツが大事な所を隈無く湿らせる。


「麻里チャン、お漏らししちゃったの?」

全身が火照り、恥ずかしさに麻里は泣けてきた。
幼稚園で卒業した、お漏らしだ、麻里は潔癖でそういう変なプライドの高い女だ。
不潔な状態が嫌いで、常に美しくしていなければならない。

「誰にも言わないで!」
半べそで彼に泣き付いた。

「麻里チャンと、二人だけの秘密にしよう。素っぴんがあどけなくて可愛いのも、誰にも教えない」
意思のある、独占欲の強い言葉に麻里は弱い。日本人にはない、彼の強引なところに惹かれたのかもしれない。

昨夜のことも忘れて川辺で皆で遊んだ、浅瀬だったが、麻里は替えのパンツは持たなかったのでノーパンだった。
皆より思いきり動けないでいると、彼は察しよく手を引いてエスコートした、ありきたりだが、格好いいと思えた。

そんな姿を、いい雰囲気と思い込んで外れた察し方をされて、帰りに置いてかれた。

バスは1時間待たなければならない、タクシーで帰るにもあと少し歩かないといけない。
二人で歩くと歴然とした、体力の差が出てしまう。
怨めしく置いてかれて行く後ろ姿を麻里は追いかけた。追い付くと、飲み物を自販機で買っていた、それも麻里が好きなアップルジュースだ。アップルジュースしか麻里は飲まないと、同級生に言われていた、そこをよく見られていたのだ。

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