《MUMEI》 中学校二人が隠れ場所に選んだのは、ユウゴがこのゲームのルール説明を受けたあの中学校だった。 他の建物に比べて、ここだけはなぜか荒らされていない。 参加者たちは逃げることに必死でスタート地点へ戻ろうという考えは起きなかったに違いない。 実行委員などの関係者がそのまま残っているのではと警戒していたが、そこには誰もいなかった。 とりあえず、ユウゴたちは職員室のドアを壊して中へ侵入した。 職員室は、まるで普通の休日であるかのように静まり返っていた。 整頓された机が並ぶ様は、今のユウゴたちにとっては懐かしさを覚えると同時に異様な雰囲気を感じさせるものだった。 「ユウゴ、水があるよ」 嬉しそうにユキナは蛇口から流れる水を両手に受けている。 「ああ。とりあえず顔、洗おう」 ユウゴも水道に近づきながら言った。 水をそのまま顔にかけると傷が痛そうだったので、棚から見つけたタオルを濡らしてヒタヒタと汚れを落とした。 だいたいの汚れを落として、二人とも床に座り込んだ。 窓からは朝陽が差し込んでいる。 「……サトシ、無事かな」 窓から見える青空を見つめながらユキナが呟いた。 「大丈夫だろ。警備隊の奴らも俺たちを追って、この近くをウロウロしてるはずだし」 ユウゴが答えると、ユキナも「そうだね」と頷いた。 時計を見るとすでに六時を回っている。 終了のサイレンまであと約四時間。 「……このまま終わんねえかな」 ユウゴは大きくため息をついた。 しかし、ユキナは何も言わない。 「なあ?……って寝てんのかよ」 横に座るユキナは、立てた両膝に腕を乗せ、その上に顔を伏せていた。 そういえば、ユキナは昨日から一睡もしていなかったはずだ。 少しだけでも寝させてやろうと、ユウゴは外の様子が見えるよう、机の上に座った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |