《MUMEI》

侵略者の末路....。


ダイスケの視線の先には、黒服の一人が床に伸びている。
体はうつ伏せなのに、その顔は上を向いていた。


サングラスが斜めにずり落ち、どこかキョトンとした表情で、天井をうつろな眼で見つめている。


両腕の手首と肘(ひじ)の間が、新しい関節でも出来たかのように折れ曲がり、でたらめな方向を向いていた。
その様は、まるで壊れた人形のようだ。


もう一人はこちらに背中を向けて、うなだれるように座りこんでいる。


いや....うなだれているわけでは無い。


肩から上が無いので、そう見えるだけだ。


男の肩から上....頭部は、部屋の反対側にサッカーボールのように転がっていた。


顎の骨が外れたのか驚くほど大きく開き、ダイスケに向けて『あかんべー』でもするみたいに、通常の三倍は長く見える舌を、でろんとはみ出させている。


こいつはそんな有り様にも関わらず、
律儀にサングラスをきっちり嵌めたままだった。


凄まじい力で無理矢理引きちぎられたためなのか、ギザギザな首の切り口からは、ひも状の血管と筋繊維が何本も飛び出していた。


座りこんでいる本体の方の、首の切り口はと 言えば、今だにどくどくと血を溢れ出させ、床上に赤い池を広げ続けている。


それはこの殺戮が起きてから、さほど長い時間が経(た)っていない事を意味していた。

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