《MUMEI》

「ほんっっとに、パパったら大バカヤロッ....」


誰にともなく呟きながら、アヤは手紙を折り畳み、それでも丁寧に写真と一緒に封筒へ納め、再び懐に戻す。


「誰か大事な人の手紙なの?」


隣の老婦人が話しかけてくる声に、


「いいえ!そんなんじゃ無いんです!」


即答(そくとう)する。


だが続けて口を開いた時、元気盛りの
16歳の女子に似合わず、その瞳は憂いを含んで伏せられ、声は沈んでいた。


「大人の癖に、夢みたいな事ばかり言ってる大バカヤローです....」


「でもあなたが手紙を読んでいた顔でわかるわ。とても、大切な人だと言う事がね....」


「だから、違うんですってば」


「何だか複雑な事情がおありのようね。でも色々言いたい事があるのも飲み込んで、ただ抱きしめあえば解決する事もあるものよ」

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