《MUMEI》
4
翌日、早朝
珍しく夜明け前に目が覚めた片岡は明けかけの夜を縁側にてぼんやりと眺めていた
段々と白み始めた空を、只何となく眺めていると其処に
どこからか飛んできたのか、一匹の天道虫が現れた
その虫は内をするでもなく片岡の周りを飛んで回ると
明るんだ空の中へと消えて行く
あの二匹も今、この朝の中、陽の光へと飛んでいるのだろうか
ふとそんな事を考えていると襖越しの座敷
七星が身じろぐ気配を感じ、片岡は座敷へと入る
見れば布団を蹴散らし、腹を出して眠る七星の姿
普段大人しいくせに、寝相ばかりはにぎやかだと肩を揺らし布団を掛けなおして遣った
いつか、この天道虫も自分の元から飛んで行ってしまうのだろうか
ソレが、七星のいう(救い)ならば、片岡に止める権利はない
そんな事をぐるぐると考えていると七星がまた身じろぎ、そしてゆるり目を開く
「……主。私はまだ、此処にいても、いい?」
片岡の考えを見透かしたかの様な七星の言の葉に
片岡は頷いて返して遣ると、もう少し寝る様髪を梳いてやる
その手の心地良さに七星は表情をほころばせ、またゆるり寝に入って行った
ああ、夜が明けた
昇り始めた朝の陽に目を細め、片岡は襖を閉じる
まだ、陽光は眩しすぎる
自分にはこれくらいの仄かな陽光が丁度いいのだと
傍らで眠る七星を見やりながら、片岡は一人そう思ったのだった……

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