《MUMEI》
眠る繭
朝から頭が痛い

体が重い

僕は疲れていた
社会に出てから何度目かの 大きな疲労の波が 僕を飲み込んでいた

僕は倒れたことがない

朝礼で貧血を起こす女の子がいるけれど羨ましい

僕はどんなに辛くっても 泣きたくっても 涙がでるのは後の方で 気を失ったりしたことは一度もない

祖母に言わせると それはお前が強いからだ と言う

僕が強いだって? こんなに倒れたがっている僕が?


夜が来て 一人でベッドに横たわっていると ベッドと僕が触れている所から柔らかくなっていって 沈んで液体になって 消えないかなって 思う

このまますっと消えて誰の頭からも自然に忘れさられたらいいのに


そうしているうちに 眠ってしまった
満月の明かりで目を覚ました

遠くで走る車の音
夜中の女の人が一人で歩いている音

蒼い色

誰も僕を知らない時間


僕と月の秘密の逢瀬

この時がずっとならいいのに


デリカシーのない太陽が 僕を彼女から引き離すのだ

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