《MUMEI》
ダミーソード
砂漠の遺跡で邂逅した偽物の魔剣、そしてつい先ほど名も知らぬ老人から聞いた魔剣の伝説。
加えて、自分たちが魔剣を求めて旅をしていることも。

デルタの魔剣の存在を悟られぬよう所々誤魔化しを効かせたラミアの話を、ハイネは瞬きひとつせず真剣に聞いていた。

「なるほど‥偽物とはいえ人を異形に変え、超常の力を与える‥やはり魔剣とは普通の魔導武器とはかなり異質な道具のようですね」

「知っているの‥?」

あまり動じた様子のないハイネに、ラミアは少しばかり驚きつつ尋ねた。

ハイネは神妙な面持ちで、傍らのカバンから世界地図を取り出す。

「ええ‥偽物だけなら、過去に何度か目にしたことがあります」

二人の間に広げられたそれには、幾つかの赤い点が記されてあった。

その分布はラミアの旅した砂漠を始めとする南から、この北の大地に至るまで、かなり広範囲に、それでいて不規則に広がっている。

「この赤い点は、これまで僕が偽物と思われる魔剣と出会った場所を示しています」

「嘘っ!?こんなに‥?」

レストランの静まり返った空気も忘れ、ラミアは驚愕のあまり声を上擦らせて立ち上がった。

ハイネは「そうです」と続ける。

「僕はもう8年ほど、魔剣を探して旅をしています。既に伝説となって尚、その力を追い求める人間は少なからずいるのでしょう。僕や‥貴女のように」

まるで深い闇のような黒い瞳に見つめられ、ラミアはぐっと息を飲む。

「そして、その力を自らの手で生み出そうと優れた贋作を作る者もまた然り‥。以前会ったことのある偽物の魔剣使いは、それを『ダミーソード』と呼んでいました」

「『ダミーソード』‥‥」

初めて耳にするその名を反芻すると、脳裏にあの砂漠で戦った化物の姿が思い起こされる。

あの悍ましい手に握られていた小さな剣。
あれもダミーソードという代物だったのだろうか。

ラミアはテーブルに広げられた世界地図を今一度見やる。

私たちの他にも沢山の人が、魔剣という伝説を追っている‥。

ラミアとて故郷を出てから数年間、必死に魔剣を追い続けたつもりだ。南の大陸中を巡り、各地の文献、伝承は全て網羅している。
それなのに、本物の魔剣は影すらも見えてこず、偽物ですら自力で見つけることは叶わなかった。
デルタとの偶然の出会いが無ければ、きっと今でもそうだったに違いない。

やむをえず贋作を造り出した彼等もまた、ラミアと同じだったのだろう。

結局のところ、魔剣とは一体何なのか‥謎は深まる一方だった。

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