《MUMEI》

双子の兄だ」
(兄弟!?)
 そう言われれば、叶人と彼はよく似ている。
(最初、叶人さんかと思ったもん…)
「あの…」
「なんだ?叶人じゃない、彼方(カナタ)だ」
「彼方、さん…?」
 ガチャッ!!!…バタンっ!!!
「家にひびが入っちまうだろうが!」
 どうやら叶人が来たらしい。足音が近付くにつれて、大きくなってくる。
「カナっ!!!!!」
 叶人が走って来た。全力疾走して来たのか、肩を上下に大きく動かして呼吸している。
 ―ぎゅっ。
「カナ…」
 叶人の、自分を愛おしげに呼ぶ声が耳元に聞こえた。逞しい腕がカナを包み込む。
(どうしてカナのこと、必死に探してくれてたの…?)
 ―他の人に触れていたくせに。触れられても、拒絶しなかったに、否定の言葉すら発さなかったくせに。
(こうやって女性に触れることに、何の抵抗も無いんでしょう?)
「ごめん…。“あいつ”に居場所を突き止められるなんて、思ってなかったんだ…」「あの人は誰なの?」
「あいつは…社長のご令嬢。カナが投稿している会社のね」
「…!?」
「それだけじゃないだろ」
 叶人はカナから身を引いた。
「彼方?」
「お前がその子の担当者に就く前に、何をしていたか、言ってやれば?」
(叶人さんがカナの担当者に就く前…?)
「…彼方、それ以上言うな」
 今までに聞いたことのない、叶人のどすのきいた声。彼方がその先を言ってしまえば、叶人は殺気を発してしまいそうだ。
「彼方さんは…知ってるの?」
「知ってるさ」
「カナ、そいつに訊くな!」
「叶人の前職は」
「それ以上、言うなぁーーーーーっ!!!」

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