《MUMEI》
妖狐村と彼と私
森林の奥にある小さな村 それが 妖狐村。

その村のはずれにある
私 好音の我が家では、今日も何気ない日常を
送っていた。

私は 布団にくるまって寝ていた。
目覚まし時計が鳴ると同時に 祖父が起こしに来る。 「好音、いい加減起きろ!もう夜6時だぞ!!」

私は 飛び起きる。

「門番の時間!?」

私は あわてて支度する。
「行ってきます!」

玄関を飛び出すと
そこには
制服らしい服を着た男が
びっくりした顔で
こちらを見ている。

…ここでは見かけない顔だな…

私は声をかけようとした。
ところが、彼は
数秒たつうちに 私の前から走り去ってしまった。

(何だったんだろう?)

彼は 私に見つかって
すごく焦っていたようだけど…

まさか、侵入者!?

この村は 人間界と妖界の 間にある。

人間が迷いこんだり、妖がちょっかいをだしに来たりすることが多い。

そのため、この村には
朝 昼 夜に村の入口に門番がいる。

私は 夜6時ごろ出勤だ。


考えてみると こんな時間に見知らぬひとがいるのはちょっと おかしい。

私は急いで彼が去った方向に走りだす。


村の入口まで行くと、
村人達がザワザワと騒いでいた。

「さっき、知らない人がいたんだけど…」

私がそう言いかけて、
村人の何人かが口々に話す

「好音ちゃんも見かけたの?」
「門番の目をぬすんで侵入したんだ!」
「いや、さっきは誰もいなかったらしい。…この時間の門番って…」


一斉に私を見る村人達。


私は 慌てて頭を下げる。

「ご…ごめんなさい!寝坊しちゃって…」


ハア…と ため息をつく
村人達。

「と…とりあえず、さっきの怪しい人を探そう!」

その言葉を発すると同時に私は 彼を見失った所…
つまり、自分の家の近くまで 走りだす。




走ってばかりの慌ただしい日々。


これが日常だ。




そして 家の近くの草むらに 怪しい人影が見えた。

ガサッ…


私が近付くと、草むらの方から 段々音がしてきた。
ビクッとしながらも、私は少しずつ歩み寄る。



そして、草むらのすぐ前に来ると
男の人らしき者が倒れてるのに気付き、私は急いで村人を呼ぶ。

村人達が倒れてた男を運んでるのを見て、
私は 家の近くにいた彼だと気付く。


(そういえば、ここは妖界の入口に近い…もしかしたら、ここを通った妖に襲われたのかも…)


彼は 私の家に運ばれた。



数日 彼は寝込んでいた。

彼は、私の部屋のとなりの部屋にいる。

祖父のうるさい声を除けば基本 静かなため、
何か音が聞こえたら すぐ わかる。


私は彼が逃げないように 監視している。

そのため、しばらくは
門番の仕事はお休みだ。


彼の監視と言っても、
彼のいる部屋にずっといるわけではないけど…

なので、私は 自分の部屋でごろごろしたり、
人間界のことを勉強したりしている。


すると、突然
彼のいる部屋から音が聞こえてきた。



カタン…



彼が起きたのかもしれない

私は慌てて彼のいる部屋まで行く。


「…おねえさん…もしかして、ここ妖怪のいる村?」
彼の声は
驚くほど 澄んでいた。


とてもキレイな声だった…

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