《MUMEI》

会場が一気に、騒然となる。


「カタストロフィーとは穏やかでは無いな、議長。
その予測とやらは、一体何を根拠にしているのかね?」


「予測は『人間電算機』50人が弾き出した解答だ」


議長がきっぱりと言う。


「人間電算機....ナイトヘッド・プロジェクト初期に、数百人の被験者の中から、コンピューター人間が大量に生み出されたと聞くが....」


「5年以内にほとんどの者が精神錯乱により廃人化、もしくは自殺に追い込まれた。
50人と言うのは、数少ない生き残り達の事かな?」


「カボチャ頭の化け物達か....
気色悪い....」


「口が過ぎるぞ、マルコビッチ!」


穏やかだった顔が一変すると、、議長がこめかみに血管を浮き上がらせて、頭上へ
怒鳴りつける。


「彼らこそ人類が持つ無限の可能性を差し示す、偉大なる先駆けとなる存在なのだぞ!」


「どうだか....」


相変わらず皮肉っぽく肩をすくめるマルコビッチを、ぎろりと睨み付けながら
議長は続けた。


「人間の果てしない想像力を駆使し、
運命の不確定要素まで取り入れた彼らの予測能力は、普通のコンピューターの
それを遥(はる)かに上回るのだ!」


「まあ、プロジェクトの立案者が実験のマイナス面を指摘されるのは、とても辛いのはわかりますがね、
超人兵士の暴走事件では、研究所がひとつ、ぶっ潰れたらしいではないか?」


マルコビッチの顔一面に、楽しそうな笑みが張り付いている。


「ふん。その件は兵士を『処分』した事でケリが付いているはずだが。
偉大な前進のためには、時に大きな失敗は付き物なのだ、
そして賢人とは、ひとつの失敗からより多くの事を学ぶものなのだ。
分かるかね?マルコビッチ君」


「ふふん。私にはどうも全てが行き当たりばったりのようにしか、見えませんがね」


「ひとつ質問してもよろしいかな、マルコビッチ君?」


今度は議長の顔に、意味ありげな笑みが広がった。

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