《MUMEI》

「彼方!お前、どういう気だ!?」
 カナが部屋から出て行き、そこは叶人と彼方、二人きりだった。
「アイツに真実を伝えただけだ。何か文句あるのか?」
「あるわ!」
(お前は、カナに一番知られたくないことをおしえたからな)
「アンタの秘密、おしえたからだろう」
「わかっていながら、なぜおしえた!」
「知りたそうだったから、おしえただけだ」
「………っ」
(知りたそうだったからって、そういうところだけ、親切になるか?)
「“何も知らない”子に“手を出す”前に、“愛”をおしえたら?いくら相手が求めてきても、な」
 彼方の睨むような真剣な視線。かなり威圧感がある。
「………」
(カナはまだ恋を知らなかったのか…?)
 ―それ以前に、誰かと愛し合うことすら知らないのか…?
(カナは無意識だったんだろうけど…)
 ―愛されることを知らない、捨てられた子犬みたいに、寂しそうな眼になることがある。
(本当に誰からも愛しあったことが無いというのなら…)


 ―俺が“愛”を教えてあげるよ。

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