《MUMEI》

「君が私にしつこく絡んでくる動機は、嫉妬心から来るものなのかね?」


「はて?一体何の話をしているのかな、議長は?」


「強がりはやめたまえ、マルコビッチ君。
君は前議長の椅子をこのアレキサンダーに奪われた事を、執念深く根に持って、
事あるごとに揚げ足とりをしているのだ。
そんな負け犬根性だから、君は駄目なのだ。
他人をひがむ前に自分を磨きたまえ」


「この馬鹿!」


「馬鹿とは何だ、このヤロウ!」


「馬鹿だから馬鹿と言ったのだ。
このマルコビッチ様が、お前に嫉妬するだと?!
お前はどこまでおめでたい自信過剰の
ゴーマンヤロウなのだ。
フハ!フハ!フハハハハハハハハハハハ
!!!!!!!!!!!!!!!
あんまり可笑しくって、腹の皮がよじれちまうよ!
あははははははははははは!!!!!!
そんなに俺を笑い死にさせたいかーー?!
アレキサンダーくぅんん?
くーーっくっくっくっくっ!!
あー、腹イテーー!!
フハハハハハハハ!!!!」


「・・・・・・・・」


「まあ何だな....そこまで自己肯定の塊だと、悩みが無さそうで羨ましいぜ。
毎日幸せな気分で過ごせそうだしな?
こうゆうのも、嫉妬と言えるのかな?
あはははははは!!!!!!」


「貴様ぁーーっ、もう我慢できんっ!
ちょっとこっちへ来い!殴ってやるからっ!」


「そう言うお前が、こっちへ来いよ」


「いい加減にせんかーー!!!!
このド腐れドもがああああ!!!!」


突然、ふたりの喧嘩の間に凄まじい怒声が割り込むと、


ドグワシャーーー!!


続けて物の破壊される音が球体内に鳴り響いた。


その怒声は喧嘩の当人達はもちろんの事、今まで鼻をほじったり、あくびを噛み殺して事の成り行きを見守っていた他の者達をも、一瞬のうちに緊張で凍りつかせた。


怒声を発したのは、一番最初に『カタストロフィー』とゆう言葉に反応した、
白髪の老人であった。


驚くべき事に、老人の握りこぶしの下では机が割れ砕け、くの字に折れ曲がっている。


最初とは、老人の様相が一変していた。


まるで静電気でも当てたかのように全ての白髪が立ち上がり、両目が真紅に輝いている。


怒りのために顔面全体に深く刻まれたシワが、老人の顔を人間離れした、悪魔的で異様な怪物じみたものに見せていた。


「テメーら!世界がふっ飛ぶかも知れねーっちゅう重大事が迫っている話をしよーって時に、いつまでクッダラネー餓鬼の喧嘩をしとるんじゃーー!!」

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