《MUMEI》
突然
「違うの、聞いて、柚琉。私は…もう耐えられないの」

「…なぁ、それは順々追って解決していけばいいだろ?」

「うぅん、もう駄目よ…私には耐えられない」

体が、ふわっと浮く感覚。

「ゆかり……!!!」

大きな声。

そこからは全てが遮断された。

そう、

世界が止まったように。



―――――――
―――――――――

指先の、暖かい感触。

同じリズムを刻む、何かの電子音。

体中を覆う、疲労感と鈍い痛み。

頭がボーっとして、働かない。

「…ゆかり様?」

呼ばれて、うっすら目を開ける。

翔だ、翔が、そこにいる。

嬉しさが込み上げる。

どうして?

翔は私が12歳の時から私に仕える執事。

いつも側にいて、それが当たり前となっていた。

今更翔がいる事に喜びを感じるなんて…

「か…ける」

手を伸ばそうとしたら手が動かなかった。

見ると翔がぎゅっと握っている。

「ゆかり様ゆかり様ゆかり様……!良かった…お目覚めになられて……」



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