《MUMEI》

「うーん…健志が大丈夫っていうんならいいと思うけど、村の皆に会ったら何て言われるか…」


健志が特別嫌なことを言われたわけじゃないけど
皆がまた健志のことを嫌な目で見たり、本人がいないところで何かとひそひそと言ったりしてないか心配だ

「大丈夫だよ。好音が、根は良いひと達だって言ってたじゃん。その内おさまるよ。」

(まあ…あんまり気にしてても仕方ないよね。)

「じゃ、ちょっとそこらへんを歩こうか、健志!」

私は 笑顔でそう言った。


ところが、部屋を出てすぐのところにある庭に出ると祖父がこっちを睨んで、
後に近づいてくる。


「怪我人は治るまで寝てろ!!」

ドシャーッ!!


祖父が 健志を投げ飛ばした。

「じーちゃんっ!?余計に怪我させないでよ!」

私は痛がる健志を慌てて
起こした。


「大丈夫…いててて…」


「何で外に出ようとした?理由を言え」

祖父の問いに
健志はきちんと答える。

「人間はたまに外の空気を吸わないと、調子が悪くなるんです。怪我をしてても同じです。」


私は二人を見て
ハラハラどきどきしていた
(あぁあ…大丈夫かな?じーちゃんも、何であんなことをするのかな?)

「わしが良いと言うまでは家を出るな。まだ傷口が閉じてないだろう。無理はするな!」

(じーちゃん…もしかして健志のこと心配してる?)

「い…いきなり叩くことはないでしょー!?」

じーちゃんに思わず言ってしまう私。

健志は 痛がりながらも
笑っていた。


「愛のムチだ!!」


じーちゃんのその一言で
場は一気に笑いに包まれた

笑っている途中
私は庭の外の草むらに
人影があるのに気付いた。

(あ…村の皆だ。皆、なんだかんだ言って健志のこと気にしてるんじゃん。)


そのことに気付いたのか、健志は庭の方を見て
一礼をした。


健志にも
村の皆が優しい人達だってわかってくれたみたい…

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