《MUMEI》
狐の秘密
「今日は雨だね〜怪我の治りがおそくならない?」
私は 健志にそう言った。
「ああ、動かなかったら大丈夫だと思う。それにしても…けっこうな豪雨だね」
「うーん…妖狐村はあんまり雨になったことないから珍しいなぁ。」

「そうなの?」

「うん。」

そうやって、他愛ない会話をしていた私達二人の前に黒ずくめの妖怪がやってきた。

(村では見かけない顔だ…)
でも、侵入者だったら
村の皆が騒ぐはず。


「誰か、変化してるの?」
私はそう 聞いてみる。

「おう、わしだ。びっくりしたか?」

その声は…じーちゃんだ。

「何なの?もう百年くらい変化してなかったのに。」
「え!?好音…百年も生きてるの?」

健志は びっくりした顔を 浮かべていた。
そういえば、人間の年では百年生きるとけっこうな年なんだった。

「うん、もうそろそろそのくらいかな?誕生日がいつかは忘れたけど…」

私は そのことを知らずに 平然と言った。


呆然としている健志を
尻目に、じーちゃんに向き直る。


「で、今日何かあるの?」
そう聞くと、じーちゃんはさっきとは別人みたいに
気が引き締まった顔をした

「好音…お前も、もういい年だ。そろそろ言っても良いだろう。」

(急になんだろう?)


じーちゃんは、健志の方をチラッと見て

「多少邪魔者もいるが、まあ…話そう」

と、言う。

私は、じーちゃんが
何か大事なことを話そうとしてるのに気付いた。

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