《MUMEI》

 しかし、母の流す涙がそれを事実だと告げている。
 ―プツリ。
(ママをよくも…!)
「ママを“モノ”扱いするなぁーーーっ!!!」
 父に対する怒りが、普段カナの中で眠っている剛力を覚醒させる。その力で彼からの拘束を振り払った。
「許さない!お前なんか死んでも絶対に許さない!」
(ママの仇…っ!!!)
 カナは怒りで我を忘れて、父に殴りにかかる。
「………ぁ!!!」
 しかしあっさりと受け止められ、返り討ちで突き飛ばされた。全身を床に打ちつけ、激痛がカナを襲う。
「さっき言ったところじゃないか」
 父がカナの頭の直ぐ力に跪き、カナを見下した。
「パパ…。ママのこと虐めないで」
「じゃあ、カナが代わりにヤる?」
「ママを解放すると約束してくれるのなら…」
「カナ…ぁ、だ」
「人形は黙ってろ。喋れる舌は無いはずだよ、“鳴くための”舌はあってもね」
 父が母の言葉を遮った。
「カナは…

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