《MUMEI》
序章
『そんな圧底メガネじゃなくて、コンタクトレンズにしたら?重たいでしょ?』
 ―眼科医の母の声。
『髪切らないの?そんなボサっとした髪型なんかやめて、セミロングくらいにして、すいてスッキリまとめようよ。ただでさえ髪の量が多いんだから、印象も重たくなってるよ?』
 ―スタイリストの父の声。
『アイツ、なんか気持ち悪いよなー。髪長いし、牛乳瓶の底みたいな圧底メガネかけてるし。図書室の幽霊みたいだよなー』
 ―クラスメイトや同級生の声。

 うるさい、五月蝿い、煩い、ウルサイ、うるさいっ!!!私に口出しするなっ!!!
 毎日毎日、私のことを好き勝手に言いやがって!私はこれでいいから、放っといてよっ!!!
 ―それが通じたのは昨日までの話。




 小野 春花(オノ ハルカ)、高2で16歳。
 普段は膝裏ぐらいまである髪を項辺りで1つに束ね、幼い頃からの近視で牛乳瓶の底くらい厚いレンズのメガネをかけ、制服のスカートは極限まで長く見えるように履いている。
 また、1人で居ることを好み、人を寄せ付けないような格好をしている。
 ―人付き合いなんて煩わしいだけ。1人で居る方がどんなに楽なことか…。
 いつも人集りを見てはそう感じていた。

 ―…はずなのに。

 クラスメイトの1人をはじめ、彼を含めた3人の男子が春花を大きく変えた―――。

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