《MUMEI》

でも私は、じーちゃんに
はっきりと言った。

「私は、妖狐村にずっといたい。外の世界を知りたい気持ちは…まったくないわけじゃないけど、私の大切な場所はこの村だから。」
一旦、間が開くが、
じーちゃんがほっとした顔をして話しだす。


「そんな嬉しいことを言ってくれるとは…さすが、わしの孫だ。」


じーちゃんは部屋の扉を開き、出て行こうとする。

「話はそれだけだ。」

と言って歩き去ってしまった。


「あ〜びっくりした!何かと思ったよね。」

私が何気なく言った途端、健志は言った。


「好音は…強いね。」

私は、意味がわからなかった。

「え!?何を急に…」


「俺は…好音みたいに強くない。」


ますますわからなかった。何故健志がそんなことを言うのか。

しばらく経つと、健志は 私の方を向いて言った。

「この村に来て最初に言ったよね?俺は、嫌なことがあって妖狐村に逃げてきたって。」

思いだした。
健志が怪我してすぐのころに、事情話してくれたときに聞いていた。

「俺は…学校でいじめられて逃げてきたってのに、好音はあのおじいさんの話を聞いても全く動じない。俺、男のくせに情けないなぁ…」

ガッコウ…確か
人間界の学舎…だよね。
いじめられたって…何で?健志は すごく良い人なのに…


困惑した私の顔を見て、
健志は説明しだす。

「お人好しすぎなんだって、俺。普通に優しくしてるだけなのに、他人からすれば良いカモなんだよ。それでいじめられた。」

私はさらに困惑した。

(何で健志がいじめられるの?思いやりのある良い人なのに…)


私は、何を言って良いのかわからず、健志も
黙っていた。

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