《MUMEI》 ―――。 馴染みのあるフカフカとしたやわらかいものがオレの身体を温かく包んでいる。 …あぁ。確か鼻血を噴いて倒れたんだったな。 「意識は戻ったかい?」 色白の整った顔立ちが、オレを覗きこんでいた。 校医の先生と言えば、みんなは美女とイケメン、どっちを思い浮かべる?俺は後者かな。今、目の前に居るのだから。 彼は如月 麗斗(キサラギ レイト)。通称、「保健室の麗人」。男なのに、肌は綺麗で、透き通るくらい白い。髪色はダークブラウン系で、髪型はウルフカット。 そんな彼が「保健室の麗人」と呼ばれるようになった理由、それは去年の文化祭のことだった。彼は、教師バンドで女装して、歌い手さんくらいに高い声を出して歌っていた。それが原因で文化祭の代休明けから「保健室の麗人」というあだ名が付いた。 「ぼーっとして…、まだ意識が朦朧としているのかな?」 「していません!」 「顔が紅いよ?布団を被せすぎたからかな…」 先生は身体を起こし、被せてくれていた布団を腹が見えるくらいまで捲った。 先生の表情がくもった。どうしたんですか? 「最近、鼻血を噴くことが多くなってきたね?」 「はい…」 先生はイケメンで女装が似合うだけじゃない。学校で唯一、オレにかかった呪いを理解してくれている。 「少しずつではあるけど、血色が悪くなってきてる。このままじゃ、呪いで衰弱死してしまうよ」 「………」 オレを衰弱死へと導く、アリアドネの呪い。それは日に日に強くなっていき、鼻血の頻度を高くする。 「そんな、悲しげな顔するんじゃないよ」 先生が俺の頬をスッと撫でた。彼の手は大きく、温かくて、安心感がある。 「っ!?」 前へ |次へ |
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