《MUMEI》
オモイ
ーーどうせなら街に住む妖怪にでもうまれたかった。


なんの刺激もない、ただ過ぎる時。
この木の上からどれだけの間街を見てきただろう。


九尾狐。
最強をうたわれた、妖怪のひとつであり
俺•星玉の父でもある。

有名な父のおかげで
何苦労一つなく育ってきたが

この城からでたことはない。

仕方が無いと言われればそれまでだが
どうせならば普通の暮らしがしてみたくもあった。


…あぁ、あそこに住む待人はなにがあんなに楽しいんだろう。
どうしてあんなにも笑顔なのだろう。


1度でいいから体験してみたいものだな。




ーーどうせならあの城に住む妖怪にでも生まれたかった。

私の母、飛縁魔は色々な男に手を出したと
街ではもっぱらの悪女妖怪。

そんな母が唯一愛した人間の男、私の父は
母を愛し、愛し故自らを滅ぼした。

そしてそんな男を追って、私の母も死んでいった。


残された私は、どこに行っても認められない存在だった。
妖怪も人間も、私に受け継がれる飛縁魔としての美しさをおそれ
虜になったら最後にある死をおそれ


そして遠ざけた。


まだ10歳にしかならぬ、今のこのわたしに
家も金も頼る人もあるはずはなく

ただ時が過ぎ行くまでであった。


1度でいい、
人に慕われ、愛され、守られて
生きてみたいと思った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫