《MUMEI》
ミウリ
いつもと変わらぬある日。

村の河原に座りこみ、いつも通り夜が開けるのを待っていたときであった。


ゆらりゆらりと、1匹の妖が私に近づいてきた。



「久しぶりだね、黄月」

わたしの名を呼ぶ人の形をしたその妖は
犬耳を生やした女子だった。

「……祀。」


犬神の娘、犬娘の祀。
わたしの人生のなかでたった1人の友人と呼べる妖である。

日本でとても力のある犬神の娘である彼女は、
私との友好関係は決して認められておらず
会うのも1年ぶりというとこだ。


「相変わらず、美しい容姿だね」

「…一体何のようだ?」

「親なし家なし金なしの黄月に言い話♪」


…こいつは。
本当に軽く言いやがる。


でもすこし、興味のある話だ。


「どういう話?」




「私の婚約者、九尾狐様の家で働かない?」

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