《MUMEI》 先生の顔がすぐ近くまで迫っていた。オレの唇に彼の吐息がかかるほど近いっ!!! 「楽にしてあげようか?」 先生が甘く呟いた。同性なのに、メロメロになってしまいそう…! オレの顔に彼の大きくて、温かい手が添えられる。 そのまま…?ってこのままじゃ、マズいっ! オレは先生の肩を掴み、グッと両腕で彼の身体を押した。 「冗談だよ。なに紅くしちゃってんの?」 「そこまで迫られたら、男でも焦りますって!」 貴方みたいなイケメンなら、誰でもそうなりますよ。 「…それほどはっきりしていれば、十分だ」 え?今のは、オレの意識が戻ったか、確認するため…? 「それじゃあ、次の授業から頑張っておいで」 先生に上体を起こされた。そして彼はオレから離れ、自分のデスクに軽やかに着く。 彼の背中を見送った後、俺はベッドから降り、上靴を履いて、保健室を後にした。 しかし、1つだけ気になったことがある。 ―それは先生が「楽にしてあげようか?」と甘く呟いた時のこと。 彼の髪と同色の瞳が僅かに赤みを帯び、その奥で波紋のようなモノが揺らいでいたんだ。顔に触れられたときは、彼の掌の感触と体温しか感じなかったけど…。 アレは何だったのか…。オレはまだ知らない…。 前へ |次へ |
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