《MUMEI》
幕開
「ねぇ、聞いた?桐崎さんのお子さん、『あか』なんですって」

「『あか』?……緋色の瞳?……あらまぁ、それはお気の毒に」



赤、紅、緋色の瞳______


古くから人々はその瞳を持つ人間を悪魔、と称していた。



そんな噂話の中を下を向いて黙々と通る少女が一人。


年は4、5歳くらいだと伺える。

あどけない幼い顔立ちにも関わらず、纏う雰囲気と下を向いたままの瞳は鋭く、冷たい。


「…ばかみたい」


吐き出すようにして放った少女の言葉は、何に対しての言葉だったのだろうか。


噂などで他人をおとしめ合う汚い大人達へなのか、そんな噂話一つで簡単に動揺してしまう己の心の弱さに対してなのか。


恐らく両者だろう。


雨が降った後だった為、水溜まりに下を向いていた少女の顔が映り込む。



___その少女の瞳は、


淡い緋色をしていた___

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