《MUMEI》 揺れる心健志は、人間の中じゃあ 美形な方だと思う。 性格も悪くない。むしろ、良すぎると思うほど… (そんな健志がいじめられてる…) だから、逃げてきた。 そこで私はふと、ひとつの疑問が浮かぶ。 「ねぇ、健志…いじめられたのは解ったけど、なんで妖狐村のある森にきたの?」 知らず知らずのうちに 思わず私は聞いていた。 すると、ためらいがちに 健志は言った。 「俺ん家、小さいときからほとんど親がいないんだ。仕事熱心で…そんでもって学校でいじめられて………寂しかったのに加え、段々虚しくなってきて…」 そこで一旦言葉が途切れた 「自分がいらない存在なんだって思って…死のうと思って……森の中に………」 …あぁ……そうか。 健志は、そこまで追い込まれてたんだ。 一瞬、健志の顔が 寂しさ、虚しさ、悲しみ…とにかく一言じゃ言えないほど悲しみに包まれていた その顔を見た瞬間、私は… 「何を言ったら良いのか、わからないけど…帰りたくないならずっとこの村にいて良いよ。」 と、言って 健志を抱きしめていた。 「大丈夫だよ、健志。」 私は ゆっくりと、でも はっきりと言った。 できるだけ優しい声で… 「ここには私がいる。健志を必要としている人がここにはいるってことを忘れないで。」 健志は、顔を隠しながら、「ありがとう、好音。」と言って涙を流していた。 私と健志は知り合ってまだ間もないけど、特別な出逢いをしたわけじゃないけど…何故か私は、健志のことがほっとけなかった。 前へ |次へ |
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