《MUMEI》

人は死んだらどこへ行ってどうなるのだろうか。



ある人は天国と地獄があるといっていたけど、真相なんて誰も知り得ない。


なぜなら、真相を知った人間はもう元の世界には“存在しない”のだから。



確か、私は学校の屋上から飛び降りて、それから______



「ここ、どこだ」



体を起こし、閉じていた瞼を開けて緋い瞳で辺りを見渡す。


周り一面が緑に覆われていて、何故か私は草原に寝転んでいた。
風で木々がしなり、草花はざわめいてザザァと音を立てる。


その音のせいなのか、後ろにいた人物の気配を全くといっていいほど感じとることができなかった。


最早、足音すら立てずに“その人”は葵の目の前に来ていた。




「あら、可愛い」


第一声でそんな事を言ったその人は綺麗な女性だった。


紫色の髪を腰辺りまで伸ばし、左目には眼帯をして右目は澄んだ碧色をしている。


その容姿と、裾の長い黒いドレスが相まって彼女の大人の色気をかもしだしている。



綺麗な人だ、とも思う。



しかし葵は見惚れるのとは違う意味で絶句していた。



彼女の頭には、まず普通なら有り得ない____


____紫色の猫の耳がピョコ、と生えていたのだ。

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