《MUMEI》

健志と初めて会ったあの日から2週間が過ぎていた。
私は今、また門番の仕事を再開している。


村の皆から
「あの男がまともなやつだってのは十分理解した。だから、あの男の監視はもういいぞ。」と、言われたからだ。


けど……


健志と離れてわかったことがある。

(寂しい…)

健志がこの村に来てから、ずっと健志のそばにいたからか、門番の仕事は
ひどく退屈だ。

朝、昼、夜、妖狐村の門番は、妖界への入口と人間界への入口に配置され、
仕事が終わるまでずっと一人で見張っている。


(あ〜あ、健志とお喋りしたいなぁ。)


退屈で仕方ない。

思わず あくびがでる。


「大きなあくびだね。」

聞き慣れた、とてもキレイな声が聞こえてきた。

「健志!?なんでここにいるの!?家にいるはずじゃ…」
「おじいさんに許可をもらって、少しの間だけ外に出てるんだ。…好音はお仕事?」

(じーちゃん、もう外に出ても大丈夫って判断したのか…)

「うん、夜の門番の仕事。こっちは人間界への入口」
私が笑顔でそう言ったら、健志は訝しげな顔になった
「仕事って言われちゃあ、何も言えないけど…でも、こんな夜遅くに女の子一人でいるのは良くないよ。」
そんなこと言われたのは初めてだった。


(もしかして…女の子扱いしてくれてる?)

そう思った瞬間、身体が カッと熱くなった。

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