《MUMEI》

兄と妹はとても優れた容姿の持ち主でもあったが、いま目の前にいる青年二人はそれ以上かと思われる外見を持っていた。


ただし兎耳の青年はその耳のせいで台無しになっている気がするのだが。



「紹介するわアリス。彼らはこのカードの中で唯一、私と同じ『役持ち』で、耳があるのが『白ウサギ』、赤髪が『赤の騎士長』_____って騎士長、貴方なんでここにいるのよ」


騎士長、と言われた青年はニコニコと胡散臭い笑顔でミナに答える。


「いやぁ、ちょっとイケナイ事をしちゃってね。おかげさまで祝200年追放になっちゃってる始末だよ」


一体何をしたというのか。彼は。


白ウサギと騎士長と距離が近くなったせいでその端正な顔立ちがくっきり見える。


鮮やかな深紅に染まった髪に琥珀色の瞳。
赤をベースにした兵士服はさすがは『“赤”の騎士長』なだけある。


騎士長と呼ぶには四肢が華奢すぎる気がするのだが、彼の全身から発せられる殺気は相当なものだ。


しかも笑顔でこれを辺りに振り撒くのだから尚更恐い。



一方、白ウサギも耳以外は騎士長に劣らぬというよりも勝る、容姿を持っている。


先程はあまりよくわからなかったが、耳は先端がすこし白色だった。


髪は上の方から下まで、黒から茶色のグラデーションになっている。
瞳は色素の薄い色だが、兎耳以外は素晴らしい。


耳以外は。



こちらは騎士長と違って、紳士そうな雰囲気をかもし出しているし、笑顔も柔らかい。



しかし、彼の口から紡ぎ出される言葉は葵の想像をいとも簡単にこえてしまった。



「あぁ、やっぱり“僕の”アリスは可愛いです」

「何いってるのよ。アリスは“私の”よ」



誰のものでもありません。



うっとりと呟く白ウサギにチョップをかましながら堂々といい放ったミナにあきれながら深いため息を吐き出した。


隣ではニコニコと騎士長が最初と寸分変わらぬ笑顔で言い合いをしているミナと白ウサギを見ている。


その変わらぬ笑顔が空恐ろしい。




あぁ、ここは変人しかいないのか。

と葵は再度ため息をついて頭を抱えるのだった。

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