《MUMEI》 1つのベッドだった。それは白いカーテンに隠れている。 ―カーテンの中が知りたい。 オレはカーテンの端をつまんで捲り、できる限り音を立てぬよう、それによって閉ざされていた空間に入った。 真っ白で清潔な、オレにとっては馴染みのある保健室のベッド。 その1つに黒髪の女子生徒が死んだように、眠っている。彼女の顔色はあまりよくない。その頬に僅かな赤みさえなく、色白だった。 オレはそんな彼女の枕元に手を着いた。なぜかはわからない。けれど、何かに操られているみたいなんだ。手を離そうとしても離せない。身体が、抗えないくらいに強く引き寄せられている。 ある程度身体を屈め、彼女の顔をのぞきこんだ。彼女は深い眠りについているのか、オレの気配を感じていないようだ。 ―彼女を目覚めさせたい。 待て待て待て!オレは今、何をしようとしているんだ!? 身体は既に思い通りに動かせなくなっている。 ―こうなったらいっそのこと、成すがままに。 前へ |次へ |
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