《MUMEI》

「…めん…このね…」


(…?健志…何か言ってる)
私は健志がいる部屋の方に耳をすませると、健志が 私のことを言っていることに気付いた。


「好音には悪いことを言ったなあ…」


ようやく聞こえてきた言葉がそれだった。

(あのときのことを悪く思ってるんだ…)

私が勝手にキレてしまったのに、自分が悪いと思っているらしい。あのときのことは私が悪かったというのに…


「このまま仲直りできずに別れるのは嫌だなあ…」


(私だって、嫌だよ…!)

仲直りしたいけど、いつ話を切り出せばいいのかがわからない。あの日からずっと心がズキズキ、もやもやしている。


「好音も、もう俺に話かけてくれなかったりするのかな……」

(そんなわけないじゃん…!何言ってるの健志!?)


私は、健志が学校でいじめられていたのを知ってる。だからこそ、健志から離れるのはダメだと思った。
いや、私も健志と離れたくない!だって、初めてだから…村の外の人と仲良くなったのは。健志は大事な友達だから………

と、そう思ったとき、私の胸のあたりがチクンとなった。

(友達…だから……)

また、心がチクンとなった。

何で…胸が痛いのかな…
友達って言葉に反応して胸が痛くなる気がする。

この気持ちは一体…?

私がぐるぐる悩んでいると健志の声がまた聞こえてきた。さっきよりも、ずっと強い何かを感じた。

「このままじゃ、何も言えないまま別れることになる。それだけは…ダメだ」

そして、健志が扉を開ける音がした。その足音は、私の部屋まで近づいてくる。

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