《MUMEI》

健志が私の部屋の扉を静かに開けた。

「好音、ちょっといいかな?話があるんだけど…」


私は、ゆっくり健志の方を向く。

「あ…あの、えっと……」

「ごめんっ!!」


私はすぐさま謝った…が、健志も同時に謝っていた。
「健志…私があのときキレたのがいけなかったんだから、健志が謝る必要はないんだよ…?」

「いや、何も知りもしないくせに色々言っちゃった俺が悪いって!」

そんなことを繰り返しているうちに、私と健志は笑い声であふれていた。


「あははっ!二人して何言いあってるんだろうね〜」
「これじゃあ、どっちが悪いのかわからないよ、好音!」

笑い声は少しずつなくなり、やがて静かになった。
(もう、どっちが悪いとかどうでも良くなったな…)

私がそう思ったとき、健志が私をじっと見ているのに気付いた。

「あのさ、俺…明後日には家に帰ろうと思う。」

健志のその言葉に私は驚きを隠せなかった。

「えっ!?ずっとこの村にいるんじゃないの?だって、人間界では嫌なことがあったって言ってたじゃん!!」
「うん、その通りだ…けど何事にも真っ直ぐな好音を見て、俺も負けていられないって思った。…逃げるのは止めようって思った。」

健志は、とても真剣な瞳を私に向けていた。私が何を言っても聞かなそうな、強い瞳で……

「……わかった。健志自身が決めたことなんだね。」
健志は頷いた。


「だったら何も言わないよ…少し寂しくなるけど、人間界に帰っても元気で…」
「あっ!ちょっと好音、なんか勘違いしてない?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫