《MUMEI》
偽装夫婦
彼は仕事柄、ストレスが多いせいか、定期的に
お誘いがかかる。
「今日、おうち、どう?」
おうちとは、ラブホのことで、気に入ったホテルや部屋は
わりと繰り返し利用していた。
唯一、2人が偽装夫婦になれる空間を大切にしていた。
「ただいま」と、いつもチェックインする。

彼が休日に奥様とは仲睦まじく
ショッピングしているのを
たまに近所で見かける。
奥様とも顔見知りの私は、当たり障りない挨拶で
その場をやり過ごしていた。

昨夜、おうちで私を抱いた手で、カートを押す彼は
理想的な旦那様だ。

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