《MUMEI》

「…じゃあ、明日デートしよ」

「…………デート?」



水月は悠希の腹黒い一面を知っているせいか、もっと悪質な嫌がらせの様な要求をしてくるものだろう。

と思っていたため、その内容に拍子抜けした気分を味わっていた。



「別にいいけど、何処に行くの?」

「それは明日のお楽しみ」



嫌な予感しかしないな、と寒気がしてきた水月は無意識に両腕を擦った。



帰る用意をした悠希は「あぁ、それと…」といいながら水月の耳元に口を持っていって囁いた。


「…可愛い服できてね」



それを言うと、
「じゃあ明日、午前10時ジャストに駅前で」
と言い残し、生徒会室から出ていった。




ムズムズとする耳元を袖口で擦りながら「新手の嫌がらせか…?」と呟く水月にその場にいた全員は苦笑いをするしかなかった。




可愛い服など知りもしない水月は、早く家に帰ろう。と悠希のあとを追うようにさっさと出ていった。




そしてその頃、生徒会室に残されたメンバーである生徒会副会長の立花 南と、
風紀委員副委員長の有沢 蒼磨は、
生徒会書記の桃園 環によって集められていた。



「これは一大事だよ!…それに、二人っきりでどんな会話をしているかとか、会長が委員長にどんなアピールをしているかとか、委員長の服装とか、アクシデントとか、何処に行くのかとか、色々気になるでしょ?!ね、後をつけようよ」



熱弁を奮う環に少し引きながら南と蒼磨は考えあぐねていた。


最も、蒼磨と南の考えていることの四分の三くらいは、


少しくせっ毛の可愛い外見のこの男子生徒はもっとおとなしくなれば良いのに。


という考えが占めていたのだが。



「明日は暇だし、確かに気になるし行こうかな」



先に言ったのは南。


それなら、と蒼磨が行くことにして明日のストーカー大作戦(?)は決行となった。




ニヤリと不敵に笑う環に気付かない南と蒼磨は「バレたらどうしよう…」と今更ながら頭を抱えるのだった。

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