《MUMEI》
デートと待ち合わせ
そしてデート当日。


悠希より一足先に着いた水月は、特に浮かれるわけでもなく平常心で駅前へと向かった。




そんな水月の周りでは少し小さめの押さえた声でヒソヒソ話が飛びかっている。



「…なぁ、あの子ちょっと可愛くね?」

「顔っつーよりなんか雰囲気が良いよな」

「俺、結構好みだわ。声かけて良いかな」

「いいんじゃね?」



彼らの目線は駅前の、黄緑色のキャミソールの上から着た丸襟の薄手のシャツに群青色のロックスカートをはいて、髪をハーフアップにしている水月に向けられている。



彼らの話が、例え小声での会話で水月には聞こえない内容であったとしても、後からきた悠希にはその会話は丸聞こえだった。



そして素早く移動した悠希は彼らよりも先に水月に声をかけた。




「お待たせ。遅くなってごめんね」

「いや、全然。大丈夫」


声をかけられた水月は、普段は見ることのない悠希の私服をまじまじと見てしまっていた。



白のYシャツとジーンズというシンプルな組み合わせではあったが、悠希が着るとお洒落に見えてくるのだから不思議だ。



「…?見惚れた?」

「……いや、うん。まぁ…ちょっとは」



冗談で言ったつもりだった悠希は、予想外の水月の反応に少し目を見開いた。



しかしそれも一瞬のことで、




「氷川も、可愛いね」


と笑って水月を褒め、「行こうか」と水月に声をかけて悠希は歩き出す。



そのただのクラスメイトや同級生に見えない二人の雰囲気にさっきの彼らは「なんだ。彼氏持ちか」と心底残念そうに呟いて去っていった。



それを見届けて悠希は隣の同級生を少し複雑な面持ちで見つめていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫