《MUMEI》

すっかり夏の季節になったこの地域の人達もみんな半袖に涼しげな短パンやスカート姿である。



逆に、水月や悠希のように長袖でいる人物はいくら辺りを見渡しても一人もいない。



そのせいか、すごく浮いて見える二人だがその当の本人の二人が全くもって涼しい顔でいる為、気にするような通行人もない。



周りを見ればカップルだらけ。
そんな絶好のデート日和の今日この頃。
水月は複数の視線に気づいた。



チラリと視線を辿って見えたのはラフな格好に身を包んだ見知った三人の男女。




「…後ろ」


水月が放った言葉はたったの一言だけだったが、悠希はその意味に気付いた。
そして、後ろにいる南と蒼磨と環にも最初から気が付いていた。



「…みんなヒマしてるよねー」

「大方、桃園君が連れて来たんだろうね」



水月も悠希もある程度予想済みの展開なため驚く事もないが、水月はこれからどうするのか、と悠希に目で問いかけた。



そんな水月に悠希はニヤリと笑って二枚の髪を眼前に掲げた。




そこには、『超絶叫アトラクション満載!!絶叫遊園地ご招待券』とかかれていた。



「ここに行くの?」

「確認紛いに聞くけど、氷川ってホラー得意?」


「…どっちかと問われれば得意だと思う。遊園地、行ったこと無いから」



わからないけど。

という水月の返答に、

「…へー。じゃあ此処で決定」

と言うと、悠希は遊園地についての説明をしながら電車の乗り口に向かった。

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