《MUMEI》 宿と夜遊びこの世界の時間軸はどうなっているのか、先程まで明るかったのにもう日が沈み始めている。 アルは、足を止めるとこちらを見た。 「もうすぐ小さな町に出ます。そこで宿をとりましょう」 「お金は?」 この世界のお金の事もわからない。 この世界の事などさっぱりだ。 少し心配そうに聞いた葵にアルはにっこりと笑った。 「顔パスです」 「それってアリなの?」 「えぇ。…それに、『アリス』ならば他の施設も自由に使う事が出来ますよ」 その事実に葵は目を見開く。 『アリス』は本当になんでもアリらしい。 ならこの世界で不自由することはない、と少し安心した。 しかし、アルの言葉にはまだ続きがあったようで、アルは、ですが…と付け足した。 「…買い物をする場合はお金が必要です。宿に着いたら、お金と葵専用の武器を渡します」 武器とは、私を襲ってきた青年アリスの持っていたようなものだろうか。 うつむいて考え込んでいたが、アルが立ち止まった気配を感じ、足を止めた。 目の前には立派、というには少し小さい気もするが、綺麗に手入れされている和風の旅館のような建物が佇んでいた。 「ここですよ」 そういって中に入っていったアルを追いかけて中に入った。 前へ |次へ |
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