《MUMEI》
賭けのことはヒミツで
私は、苛立ってる桐生に向かって話した。

「とりあえず、おとなしくしておきゃ大丈夫だろ。」

返事はなかった。
そのまま沈黙が訪れる。

(あ…家に連絡しないと)

少し時間が経ってから、私はまたケータイを取り出す
「ちょっと家に電話するから、静かにしてくれるか?桐生!」

「…おう」

短いながらも、今度は返事があった。

そして私はケータイを開き家に電話をしだす。

「あ、もしもし、母さん?あのさ、今日は帰りが遅くなるから、そのことを父さんに伝えて。……うん、知り合いと一緒。」

嘘は言ってない。
私は知り合いと一緒にいるって言っただけで、ほかは何も言ってない。
説明を終えると、私は電話をきり ケータイをしまう

(よかった…母さんが深く探らない人で。おかげで曖昧にしても何も言わなかった)

「桐生!電話終わったぞ」
「…会食は大丈夫なのか?家族が集まるって言ってただろ?」

しだいに桐生は私の様子を伺いながら話かけてきた。
「大丈夫も何も…ここから出られないんじゃ、絶対帰れないし。それに……」

私は、桐生の方向に向けていた自分の顔をうつむかせた。

(家に帰ったら帰ったで、どうせ、私が会社を継ぐ話やらギャンブルをしようって話やらで盛り上がるだろうしな…)

だから、本音を言うと、あまり帰りたくない。
ギャンブルとかは好きじゃないし、そもそも私は会社を継ぐなんて一言も言ってない。周りの人が勝手にそういう話をしてるだけ…

結局皆、会社を守りたいだけ…私の気持ちなんて考えちゃいない。

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