《MUMEI》
彼方さんの家で。
 ―とんっ。
「俺のこと、信じてんの?」
 カナは叶人に肩を押され、座っているソファーにコロンと倒れた。
「信じてる。………んっ!?」
 叶人との距離が一気に狭められ、唇を彼のそれで塞がれる。
 食いつくような、貪るような、強引で野性的な口づけ。触れ合う唇が、身体の奥深くが蕩けてしまいそうなくらい、熱い。
「っ!?」
 カナの唇の間を熱い肉塊が割り開く。それが叶人の舌だと気づくのに時間はかからなかった。
「…ぁ…」
 彼のそれが歯列をなぞる。カナが喘いだ隙に歯の奥に舌が忍び込む。
「あ…………」
(熱いよ…)
「舌、出して」
 叶人に応じると、舌同士が絡められた。その熱が、舌を絡める時にたつ水音が、カナに彼を感じさせる。
「こんなことされても、か?」
 2つの唇が、物惜しげに銀色の細い糸を引きながら離れた。
「信じたいの…」
「……ふぅん?………じゃあ、さ」

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