《MUMEI》
完全に治っていたわけではなかった。
 ―アレから1ヶ月。今は昼休み。
 鼻血は完全に治っていなかった。今にも鼻血を噴きそうだ。こうなったら保健室に行くしかないよなー…。


〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜


 ―がらり。
「せんせー、鼻血出そう…」
「先生は出張中よ」
 誰!?
 保健室のソファーに1人の女子生徒が腰掛けている。彼女は本を持っているから、多分オレが読書の邪魔をしてしまったんだろう。
 …それにしても、すごく可憐だな。混じりっ気の無い漆黒の長い髪と同じ色の瞳、透き通るように白い肌に、華奢な肢体。いわゆる美少女ってヤツ。
「先生は…」
 彼女はチラリと時計の方を見る。彼がここに戻る時間を知っているのか?
「暫くすれば帰ってくるかな…」
「…そうなんだ?」
 彼女は元気そうだが、なぜここで本を読みながら、先生を待っているのだろうか。
「…何かあるの?」
 いつの間にか、彼女を見つめていたようだ。
「何も無い」
「嘘吐き」
 …はァ!?どこにその根拠があるんだ!?
「何かを堪えてる…。鼻血を噴きそうだから、でしょう?」
「っ!!?」
 あのことは、先生にしか言ってないのに、どうして目の前の美少女は知っているんだ…?
「そんな驚いちゃって…」
 オレの反応がおかしかったのか、彼女はくつくつと小さく笑う。
「今“楽”にしてあげるから」
 え………っ?

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