《MUMEI》

意を決して樹が公園の前を通るとトイレは使用禁止になっていた。


樹は気持ち悪くなる。若菜に試されたのではないかと考えた。


若菜は、中林春道に促され話しかけようとする樹を遮断した。

中林と若菜は深い絆でも結ばれているように寄り添っていた。

独りだとお前は不要だと宣告されたようだった。
公園を見ながら歩く。見慣れた遊具が樹を子供の頃の孤独な日々に引き込んだ。

『人殺しの子供だ』

『逃げろ、殺される』

『大丈夫、俺達が戦えばいい!やっつけるんだ!』



寂しいの?悲しいの?悔しいの?




―――――――それとも、殺したいの?


俺は、俺は……




 あ、逢いたい


「なんだよ。犬のくせに謝罪の言葉もないのか。脆弱な目から水分を無駄に露出するのが趣味?」
歌うように旋律が響いた。

包帯がはためいて、夢みたいにまばゆい白さだった。
指が頬に触れることで涙を流していたと理解した。


「…………あ、 い たかっ…………」
これ以上の言葉は出ない。口をつぐんだ。斎藤アラタにこんなことは言えない。

「不細工。」
アラタが臑を蹴る。痛みさえ快感になろうとしていた。抱きしめたくなる衝動を肘を抱えて堪えた。


「……何も考えたくないときは、貴方のものにしてくれますか。」
簡単に自尊心を捨てることが出来た。元からそんなもの持ち合わせていなかったのかもしれない。

純粋にこの絶対的な存在に支配されたいと思った。


「馬鹿犬。俺のモノなら俺のことだけ考えてればいいだろう。」
樹は足の小指の傷が疼いた。
アラタへ誓った烙印となるだろう。
それは樹の体内に毒のように周りアラタの家畜に成り下がるのかもしれない。
そうどこかで望んでいるのだ。それは絶望で希望だ、誰かの関わった上で死ねるのだから。


無関心でも所有されたのだから。

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