《MUMEI》

だけど、それでも楽しくて止められない。

(人間観察以上に楽しいことがあるわけないわ)

「花崎、待ってくれ!」

教室に向かう私に話かけたのは、同じクラスの戸田くんだった。誰とでも仲良くなれる性格で友達が多く、帰宅部で、三年生の怖い先輩と友達だと噂だけど、只何かとパシリにされてるだけのお人好し馬鹿…といっても本人は自覚ない。

「何の用かしら、戸田くん。もうすぐ予鈴なるけど教室行かないの?」

嫌な予感がした。私と戸田くんは何の接点もないのに、何故私が呼び止められるのか…

「花崎さんの噂を聞いたから、確かめたくて…あの…悩み事を解決してくれるって聞いたんだけど、本当?」

(…はぁ……またか)

私はただ、人間観察してる私に突っ掛かってくる輩を辛辣な言葉で追い返していただけだったのに、その追い返した人に何らかのトラウマを植え付けたらしく、そこから噂が立っていたのだが…段々噂の内容が全く違うものになった経緯は私にもわからなかったりする。

「悪いけど、その噂は違うわ。他人の悩みなんてちっぽけなものだもの、興味ないわ。」

他人の悩みじゃなくて、人々の心の闇は大好きだけど。

「そっか…」

まだ戸田くんは納得できていない様子…私の前でまごまごうじうじとして、私をチラッと見て目を背ける…の繰り返し。

「ハア…わかったわよ。悩み事、聞いてあげるわ。ただし、放課後にね」


(このままうじうじされても通行の邪魔だし…)

「わかった、放課後だな!」

嬉しそうに教室に入る戸田くん。ここで予鈴が鳴ったため、私も教室に戻る。

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