《MUMEI》
家のお話
ふぅ…と、一息ついてから桐生は家の話をしだす。

「実は俺の家さ、昔はかなり貧乏だったんだよ。」

(へぇ、意外な…ん?だったって…過去形?)

桐生は話を続けた。

「7年前、父親の会社がうまくいきだしてからは急に生活が一変したんだ。」

「7年前…っていうと、桐陰社か?あの、玩具とかを売ってる会社の…」

「ああ…それが父親の会社だ。…そう、7年前からいきなりデカイ家に住みだして、贅沢三昧な日々だよ。俺は前の方が良かったけどな……」

「…なるほど、会社がうまくいったらいったで、親が仕事第一になったってとこか?」

「ま、そんなとこだな。…さて、俺の家の話は終わり!次はお前だぞ、橘!」

(わざわざ男装してることまでは言わなくて良いよな…というか、女だってバレちゃいかんし。)

私は、大きな嘘にならない程度に、少しぼかしながら家のことを話しだす。

「あー…僕の家、ギャンブル関係の会社を代々経営してるんだけど、そこの次期社長になるのが僕…って話が決定済みなんだよね。」
「お前っ…社長になるのかよ!?スゲェな、良かったじゃん!!」

「全然良くない。」

私は、桐生を軽く睨み、そのまま話を続けた。

「皆桐生と同じこと言うけど、良くはないよ。確かに僕は頭が良いし運動も努力すれば学年トップにはなるよ?けど、橘の血筋で一番はやく産まれたのが僕だからって、次期社長に立候補するのはどうかと思うんだよ。」

「お…おお、なんか知らんが、お前が社長になりたくないってのは嫌でもわかったぞ…」

「まあ、次期社長にならないように父さんにお願いしているところだよ。」
苦笑いしながらそう言うと桐生は、ハッキリ聞こえない声で呟いた。

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