《MUMEI》
恋に落ちる光が射した。
昨日、隣に新しい生徒が越してきた。
彼は同じ学年で、誕生日も近い(此処には射手座の生徒しか居ないのだから、当たり前なのかもしれないけど)。学科は星詠み科らしい。

僕のイメージする星詠み科の生徒は、神楽坂先輩みたいな不思議な人ばっかりだと思ってたから、ちょっと驚いた。
でも、すぐに眠たくなるのは彼も同じらしい。ご丁寧に挨拶に来てくれたついでに部屋にあげて喋り込んでいたら、少し目を離した隙にベッドの側面に背を預けて眠ってしまっていた。

彼にブランケットを掛けながら、先程まで聞いていた星詠みの話を思い出す。

未来が見えるなんて、どんな感覚なんだろう。自分には到底想像出来ない。でも、実際に目の前にいる樒は四六時中未来を見続けている。僕からすれば少し羨ましいけれど、彼らからすれば複雑な物なんだろう。

不知火先輩も、過去に星詠みの力によって色々あったらしい。この間、生徒会室でも一悶着あったらしい。まあ、彼らの事だから夜久先輩が絡んでいる事は間違いないだろうけど。

そういえば、樒は水嶋先生の弟らしい。性格はあまり似てないけれど、髪色や目は少し似ている。
憂いや悲しみを、慈悲と慈愛で押し殺したような、そんな悲しそうで優しい瞳をしていた。
彼の顔を覗き込めば、それはよく整っており、幼さを残している。そして、人形の様に長い睫毛が中性的な印象を強くさせた。

出会って一日も経っていないけれど、樒からは何か、底はかと知れないミステリアスさを感じた。

早出の月が、カーテンの隙間をすり抜け彼を照らす。

幼さと同時に、彼に艶をもたらして行く。


これが、僕が惹かれていく合図だったのかもしれない。

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