《MUMEI》
オシオキ開始。
「オシオキって…!?」
(何されちゃうんだろう…?)
 ―痛くしないで。
 叶人に届くかわからないが、カナは願った。その先の行為を恐れて、目を固く閉じる。
「…そんなに強張る必要は無いのにな」
「…っ」
 すぅっと首筋を指でなぞられる。ビクッと身体が反応してしまう。
「痛くはしないよ?」
 叶人の手がカナの額から頬へとすべっていく。
 撫でられるのは心地良いが、何か物足りない。身体の奥深くで熱がくすぶっていくだけで、快楽はまだ感じない。
「…ひ、あ!」
「首が弱いのか?」
 さっき首筋の指でなぞられたところに口づけをおとされる。フワリ、と羽のように軽い口づけ。しかし直ぐに離れた。
(物足りない…)
「…っあ!」
 再び同じところに口づけられた。さっきと違って強く押し付けるような口づけ。さらにそこを強く吸いつける。
「物足りないのだろう、これで足りたかい?」
 吸いつけられたところに紅く色付く。
「まだ足りないよ…」
「…だろうな」
 ゆっくりと、そのひとつひとつを確かめていくように、全身を愛撫される。肩から腕へ、腕から手先へ、手先から脇へ、再び肩に。そこから谷間へ、腹部を愛撫される。
(間だけじゃ…!)
 しかし、存在を主張し始めた場所には、業となのか、触れようとしない。そこだけではなく、柔らかな膨らみ全体にも触れようとしない。
 ―お願い、触って。その手で首筋や肩、腕にしたのと同じように触って…!
 そう言いたいけれど、痛めつけられることが怖くて、言えなくて。目で訴えたいけれど、叶人はその身体だけを見て、目を合わせてくれなくて。
 思いを伝えられないことで、伝えられない思いが熱となり、身体の中心の熱くさせる。熱は次第に溜めきれなくなり、溢れていく。
(あ…、垂れてきた…)
「カナ、立って」

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