《MUMEI》
先生は彼女を知っていた
「っ!」
 先生は美少女の項に手刀を下し、彼女を物言わぬように気絶させた。崩れてきたところを細い腕で抱き止め、やさしくゆっくりとオレの横に寝かせた。
「ここでするのもアレだから、あっちで話そうか」


 オレと先生はベッドを隠すカーテンを抜けて、ソファーに腰掛けた。
「天海…、いったい何から話せばいいのか…」
 先生は深い溜め息をついた。
「これであの子が人間じゃないのはわかっただろ?」
「まぁ…。キスされた時に何か吸われてるような感じがしたから、なんとなくはわかったんですけど」
「…あの子は吸精姫(サキュバス)なんだ」 サキュバス!?
「吸血鬼(ヴァンパイア)は生き血を啜るように、吸精鬼(サキュバス)は精気を吸うんだよ」
 だから、鼻血を噴きそうになってても、精気を吸われることによって収まったんだ…。
「結奈は吸精姫として第一次覚醒をしたばかりで、加減がわからなかったんだ。訓練さえすれば調節できるようになるんだけど」
「加減の仕方を知らないまま、吸わせてしまったのか…」
「は?餌付けしたのか?」
「餌付け!?」
 餌付けって…、野生動物じゃないんだし。
「結奈がファーストキスを奪われた!…って散々怒ってた。その時に吸わせたんだろ?」
「そうだと…」
「天海…、お前、結奈から離れられないから」

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