《MUMEI》
お招き…?
「おはよう、桐生。今日は数学のテストだな。」

「おう、今度こそ負けねぇぞ橘!!」

あのプチ事件から数週間、僕と桐生は見違えるようにケンカをしなくなった。それどころかお互いにライバル心が芽生え、今ではすっかり仲良しだ。

「あいつら、あんなに仲良かったっけ?」
「毎日ケンカばっかしてたと思うんだけど…」
「どういう心境の変化!?」
まわりの連中は僕らを見て不思議がっている。が、僕らはそんなに気にしなかった。

「なあ、橘!最近気難しい顔してる気がするけど、どうした?」

「え…そんな顔してたか?」

(やべっ、桐生にまで勘づかれたか…)

事情を説明しよう。
実はここ最近、身内だけの集まりでパーティーをする機会が増えてきた。大方、次期社長である私が主役の宴会というところだ。うちの血筋は祭事大好きな一面もあるから、何かと気が早い…

(私、まだ高校一年なんだけど…というか、家業継ぐ気はないんだけど)

皆には悪いけど、私は自由に生きたい。今はまだこのことは両親にしか話してないけど、いずれは皆にも話さなきゃな…

「ちょっと家で色々あって、疲れてるだけだよ。ほら、前に言っただろ?僕が次期社長になるって話」

「うわぁ…俺とは別世界の話だな!」

「いやいや、桐生も社長令息だろうが!桐陰社の次期社長候補だし、近いうちにお前のとこもそういう話出るだろ?」

「ん〜…どうだろ?父さんは、社員の中から選ぶみたいなこと言ってたなぁ」

…つまり、会社を継がせるのは必ず息子って訳じゃないのか。

(羨ましい…)

と、そのとき私の携帯の電話音が鳴った。

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